ISOの取り組み

 

わが社におけるISOの現状・課題とISO審査への期待

 

2012年4月18日 第9回ISO管理責任者フォーラムでの報告

株式会社ビッドシステム

代表取締役 谷 径史

●ISOの現状・課題

 弊社は、社員数が10数名で、コンピュータソフトの開発を業務としております。
 弊社がISOを取得したのは、会社設立から4年後の2001年6月のことでした。取得したのはISO9001であり、当初は94年版で取得しました。
 取得した目的は、当時、株式会社への改組を進めており、それに伴って、社内の品質システムを作り上げるために、ISOが有効であると判断したからでした。社内の体制を一から作り上げることが課題であったため、何事も勉強と考え94年版を選択いたしました。
 その後、2003年10月に2000年版に移行し、2010年5月に2008年版に移行し、現在に至っております。
 そうした中で、弊社では昨2011年に、品質システムの大幅な見直しを実施しました。
 その理由は、ISOは一定の成果を上げつつも、やはりうまく運用できているとは言えず、無理があったり、形式的になったり、また省かれたりする問題を、いつになっても解決できないでいたことがあります。
 弊社では、それまでは、「仕組み自体はよいのだが、自分たちの能力が低いためにうまくいかない」と考え、仕組み自体に手をつけることは避けてきました。
 しかし、どうしても経営に役立っているとは言えず、また反面、会社設立から約15年、ISO取得への取り組みから11年が経過することで、会社の内容も整理され、ISOについての理解もそれなりに深まったことが背景にあったと思います。
 見直しの内容としては、シンプル化一貫性ということができます。
 弊社では、当初から仕組みをシンプルにはしていたつもりではありましたが、94年版から離れられずにいたものを、実際に合わせて、効果的な仕組みに再編しました。
 また、弊社の企業理念から、統一感のある体系に纏め直しました。
 その結果、かなりすっきりしたものにすることができました。すっきりさせ、筋を通してみると、これまでよく見えなかったことが見えるようになったという効果がありました。この点について報告させていただきます。
 弊社では、実際の見直しの作業にあたっては、見直しに先駆けて、約1年をかけて、自社のこれまでの歩みを振り返り、企業理念体系の見直しをおこなったことが役にたちました。
 この企業理念から、品質方針の再設定を行い、行動基準を整理し、こうした会社の基本的な軸を踏まえて、これを実現していく仕組みとしての品質システムの再構築といった考え方で見直しを行いました。
 こうした意味では、やはり会社設立から約15年、ISO取得への取り組みから11年がたって、初めて提起することができた課題だったのではないかと考えております。そして、弊社では2012年を「新生ISO元年」として位置づけております。

 振り返ってみれば、経営に役立つISOという問題意識は、その前から持っていました。
 最初は、売り上げ目標をそのまま品質目標に設定してみました。次には、経営活動そのものをISOの手順に沿って進めてみようとしたこともありました。
 そして現在、結局重要なことは会社の企業理念をどのように実現するのかということであり、ISOもこのこととの関係で捉え返す必要があるのではないかという問題意識を持っております。
 こうして見直してみると、「経営者の責任」の項に書かれているところの「組織の目的に対して適切な品質方針を設定すること」や、それは「要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む」といった記述、さらに「品質目標の設定及びレビューのための枠組みを与え」、品質方針を「組織全体に伝達され、理解される」ようにすることや、品質方針の「適切性の持続のためにレビューされる」ようにすることなど、一言々々が、大変重い要求事項として目の前に浮かびあがってきまました。
 経営者が、まず意味があって社員の多くが賛同してくれる会社組織の目的を明確に提示できているかどうか。それとの関係で適切な品質方針を設定できているかどうか。このことを社員が深く理解してくれるように説明し、教育できているかどうか。また品質方針自体が常に適切であるよう、社員の意見も聞き、環境分析もしながら見直ししているかどうか。こういったことが経営者の責任として要求されているというわけです。
 これができれば、社員自らが組織の目的を自分自身の目的との関係で位置づけ直し、自発的自律的に品質目標の達成のために仕事を進めていくことができるというわけなのだと思います。
 自分自身の責任と課題を実感しているというのが率直なところです。

●ISO審査への期待

 次に以上のような経緯を踏まえ、弊社のISO審査への期待を述べさせていただきます。
 一言で言えば、実効性のある審査を期待いたします。言い換えれば、「品質」の視点から「経営」の視点に広げての「有効性」の審査を期待いたします。
 具体的にいうと、経営者の責任の部分の審査を、もっとおこなっていただきたい。組織の目的・企業理念が適切か。企業理念との関係で、品質方針が定められているか。企業理念・品質方針自体、適切に見直しをしているといえるか。品質方針との関係で、品質目標が適切に設定されているか。品質目標を具体的に設定できるよう、企業理念・品質方針をよく説明し、教育できているかどうか。またどうすればよいか、といったことになります。
 どこの会社でも同様だと思いますが、経営者の皆様は、自社のために自分の存在を投じていらっしゃると思います。会社を良くし、経営を良くするための指摘は、それがたとえ厳しいものであれ、ありがたいものだと思います。
 会社を良くしていくためには、やはり経営者の役割が重要になります。ですから、経営者に多くの「気づき」を与えてくれる審査を期待せざるを得ません。

以上